## ラ・メトリの人間機械論の感性
ラ・メトリにおける「人間機械」と感性
ラ・メトリは、著書『人間機械論』の中で、人間を複雑な機械として捉え、その機能のすべてを物質的な原理によって説明しようと試みました。これは、当時のデカルト主義が支配的な思想であった中で、非常に挑戦的な主張でした。デカルト主義では、人間は精神と身体という二つの実体から成り立ち、精神は物質的な機械である身体とは全く異なる非物質的なものであるとされていました。
感覚のメカニズム
ラ・メトリは、人間の精神活動もまた、身体という機械の運動によって説明できると考えました。彼は、感覚器官を通じて外界からの刺激が神経に伝わり、脳に到達することによって感覚が生じると説明しました。そして、この感覚のメカニズムは、機械的な法則に基づいており、非物質的な魂のようなものを想定する必要はないと主張しました。
感情と情念の機械論的解釈
ラ・メトリは、感覚だけでなく、感情や情念といったより複雑な精神活動も、身体の機械的な運動によって説明できると考えました。彼は、感情を身体の状態の変化として捉え、例えば、喜びは血液の循環が活発になった状態、悲しみは循環が停滞した状態であると説明しました。
感性の差異と物質
さらに、ラ・メトリは、人間や動物の間の感性の差異も、身体の構造や構成物質の違いによって説明できると考えました。彼は、人間の脳が動物の脳よりも複雑な構造をしているため、より高度な精神活動が可能であると説明しました。
言語と学習
ラ・メトリは、言語や学習といった人間の精神活動の根幹をなす能力も、機械論的に説明しようと試みました。彼は、言語を記号と意味を結びつける能力として捉え、この能力は、感覚器官を通じて外界からの刺激を受け、それに基づいて身体が反応することを繰り返す中で、機械的に獲得されると説明しました。
ラ・メトリの『人間機械論』は、人間の精神活動に対する唯物論的な解釈を提示し、その後の医学や心理学の発展に大きな影響を与えました。彼の思想は、現代の神経科学や人工知能研究にも通じるものがあり、現代においてもなお重要な示唆を与え続けています。