ランケの世界史の思想的背景
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ランケの歴史観
レオポルト・フォン・ランケ(1795-1886)は、19世紀ドイツの歴史家であり、近代歴史学の祖の一人と見なされています。彼は史料批判に基づいた客観的な歴史記述を目指し、「事実をありのままに語れ」という有名な言葉を残しました。
ランケの歴史観は、当時のドイツの思想的潮流と密接に関係しています。彼は啓蒙主義の理性主義や進歩史観に批判的であり、歴史を神の摂理や法則に基づいて解釈しようとする試みを退けました。その代わりに、彼は各時代や民族の固有性を尊重し、それぞれの時代や民族の精神を理解することの重要性を強調しました。
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ドイツ観念論の影響
ランケの歴史思想は、特にヘーゲルやシェリングなどのドイツ観念論の影響を強く受けています。彼らは歴史を、精神が自己実現していく過程として捉えました。
ランケもまた、歴史を精神的な力によって動かされると考えました。しかし、彼はヘーゲルのように歴史を理性的な進歩の過程として捉えることはせず、歴史は多様な力や要因の相互作用によって形作られると考えました。
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ロマン主義の影響
ランケは、啓蒙主義の普遍主義に対抗して、各時代や民族の固有性を重視するロマン主義の影響も受けています。彼は、各民族が独自の「国民精神」(Volksgeist)を持つと考え、歴史研究においてはこの国民精神を理解することが重要であると主張しました。
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史料批判の重視
ランケは、客観的な歴史記述のために、史料批判を重視しました。彼は、歴史家の主観的な解釈を排し、史料に基づいて事実をありのままに記述することを目指しました。
彼は、一次史料の収集と批判的な分析に力を注ぎ、歴史研究の方法論の発展に大きく貢献しました。彼が提唱した史料批判の手法は、その後の歴史学に大きな影響を与え、現代でも歴史研究の基本的な方法として受け継がれています。