ラッセルの幸福論が扱う社会問題
競争と成功の重視
ラッセルは、現代社会における過度な競争と物質的な成功への執着が、人々の幸福を阻害する主要な要因の一つであると指摘します。資本主義社会においては、人々は常に他人と比較し、より高い地位や富を求めて競争することを強いられます。この競争は、人々に絶え間ない不安とストレスを与え、真の幸福を追求する時間を奪ってしまうのです。
退屈と倦怠
現代社会の大量生産、大量消費は、人々の生活を便利にする一方で、退屈と倦怠感を蔓延させているとラッセルは主張します。機械化が進み、単純労働に従事する人々は、仕事にやりがいを見いだせず、空虚な時間を過ごすことになります。また、余暇時間においても、受動的な娯楽に興じるだけで、真の幸福感を得られない人々が多いと彼は指摘します。
家族の不安定化
ラッセルは、伝統的な家族構造の崩壊が、人々の幸福に深刻な影響を与えていると論じています。離婚率の上昇や未婚の母子家庭の増加は、子供たちの情緒不安定や社会的不適応を生み出す可能性があります。また、家族間のコミュニケーション不足や相互扶助の精神の衰退は、孤独感や孤立感を深め、人々の幸福感を損なう要因となります。
国家による抑圧
ラッセルは、全体主義国家における強権的な支配や自由の制限が、人々の幸福を著しく阻害すると警告しています。国家による言論統制や思想統制は、個人の自由な発想や創造性を奪い、社会全体の活力を低下させます。また、秘密警察による監視や恐怖政治は、人々に絶え間ない不安と恐怖感を与え、心身の健康を蝕む可能性があります。
科学技術の進歩と人間の不安
ラッセルは、科学技術の進歩が、人間の幸福に必ずしも貢献するものではないと指摘します。核兵器の開発や環境破壊など、科学技術の負の側面は、人類の生存そのものを脅かすまでに至っています。また、情報技術の進歩は、人々のプライバシーを侵害し、情報過多によるストレスや不安を増大させる可能性も孕んでいます。