ユスティニアヌスのローマ法大全と言語
ローマ法大全とは
ユスティニアヌス帝の命により6世紀に編纂されたローマ法大全(Corpus Iuris Civilis)は、古代ローマの法学的知見を集大成した法典です。これは以下の3つの部分から構成されています。
* **「学説彙纂」(Digesta または Pandectae)**: 約50人のローマ法学者の著作から抜粋・編集された法律意見書集。
* **「勅法彙纂」(Codex Justinianus)**: 歴代ローマ皇帝が制定した勅法を編纂したもの。
* **「法学提要」(Institutiones)**: 法学の入門書として、主に学生向けに書かれたもの。
ローマ法大全の言語:ラテン語
ローマ法大全は、**古典ラテン語**を基盤としつつも、**後古典ラテン語**の影響を受けた独自の文語で書かれています。
古典ラテン語と後古典ラテン語の特徴
* **古典ラテン語**: 紀元前1世紀から紀元1世紀にかけて、 Cicero や Caesar などの文筆家によって確立された洗練された文語。明快で簡潔な表現が特徴。
* **後古典ラテン語**: 2世紀以降、古典ラテン語から変化したラテン語。古典ラテン語に比べて文法が複雑化し、ギリシャ語など他の言語からの影響も見られる。
ローマ法大全における言語の特徴
* **古典ラテン語の文法や語彙を基本とする**: 法の厳密性を期すため、古典ラテン語の規範を重視している。
* **後古典ラテン語の影響**: 編纂当時の言語状況を反映し、後古典ラテン語の影響を受けた表現も含まれる。 例えば、前置詞の用法や語順などに見られる。
* **専門用語の多用**: 法学特有の概念や制度を表現するための専門用語が多数使用されている。
* **抽象的な表現**: 具体的な事例よりも、一般的な原則や概念を説明することに重点が置かれている。
ローマ法大全の言語が後世に与えた影響
ローマ法大全の言語は、その後のヨーロッパにおける法学用語や法文のスタイルに大きな影響を与えました。特に、ローマ法が再発見された中世ヨーロッパにおいて、法学研究の標準的な言語としてラテン語が使用されるようになった一因として、ローマ法大全の存在が挙げられます。