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モームの月と六ペンスのテクスト

## モームの月と六ペンスのテクスト

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語り手

語り手は物語の語り部であると同時に、ストリックランドの生涯を追う「伝記作家」としての役割を担っています。彼はストリックランドの友人でもなければ、彼を理解しようともしていません。むしろ、彼の行動や芸術に対する一般的な価値観と、ストリックランドのそれとの間にある大きな隔たりを常に意識しています。

語り手はストリックランドと直接会話を交わす場面もあれば、彼の周囲の人々から話を聞き集める場面もあります。彼が得た情報は断片的で、時系列も前後するため、読者はストリックランド像をパズルのように組み立てていくことになります。

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チャールズ・ストリックランド

物語の主人公でありながら、その内面は謎に包まれた人物です。彼はロンドンで証券取引人として平凡な生活を送っていましたが、40歳を過ぎたある日、突然妻子を見捨てて画家を志します。芸術に対する執念は常軌を逸しており、貧困や孤独に苦しみながらも、自己表現のためだけに絵を描き続けます。

ストリックランドは他人への共感に乏しく、自分の欲望に忠実に従って行動します。彼の言動は周囲の人々に苦痛を与えることもしばしばですが、一方で、彼の強烈な個性と芸術に対する純粋な情熱は、ある種の畏敬の念を抱かせます。

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「月」と「六ペンス」

「月」は理想や芸術、「六ペンス」は現実や物質的な豊かさを象徴しています。ストリックランドは「月」、すなわち芸術の世界を目指すために、「六ペンス」、すなわち安定した生活を捨て去ります。この対比は、作中でストリックランドと周囲の人々の価値観の違いを浮き彫りにする重要なモチーフとなっています。

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芸術観

モームは本作を通して、既存の価値観や道徳観から逸脱したストリックランドという人物を描き出すことで、芸術の本質について問いかけています。ストリックランドにとって芸術とは、自己表現であり、魂の叫びであり、生きる意味そのものです。彼は世間の評価や金銭的な成功などには一切関心を示さず、ただひたすらに自分の内なる衝動に従って創作活動を続けます。

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南の島

ストリックランドは最終的に南の島タヒチ島に辿り着き、そこでプリミティブな生活を送る中で、自身の芸術の頂点に達します。文明社会から隔絶されたタヒチ島は、ストリックランドにとって、煩わしい人間関係や社会的な束縛から解放され、純粋に芸術に没頭できる理想郷として描かれています。

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