モーパッサンのベラミの話法
語り手
『ベラミ』の語り手は三人称全知の語り手です。語り手は、主人公ジョルジュ・デュロワの行動や思考だけでなく、他の登場人物の心情や考えていることについても、読者に直接伝えています。
自由間接話法
モーパッサンは『ベラミ』において、自由間接話法を効果的に用いています。自由間接話法とは、登場人物の思考や発言を、地の文と明確に区別することなく、地の文の中に溶け込ませるようにして表現する技法です。これにより、読者は登場人物の心情により深く感情移入しやすくなる効果があります。
例えば、デュロワが初めてマドレーヌ・フォレスティエと関係を持つ場面で、彼女の夫の死を悲しむふりをしている彼女の心中を、以下のように描写しています。
>「可哀想な人! ああ、可哀想な人!」と彼女は繰り返した。「なんて不幸なのだろう! 一体これからどうなるというの?」
>デュロワは、彼女が夫の財産のことだけを考えているのだと直感した。
この箇所では、地の文とマドレーヌの言葉がシームレスにつながっており、読者は彼女の言葉の裏にある本音を、デュロワと共有することができます。
描写
モーパッサンは詳細な描写を得意としており、『ベラミ』においても、登場人物の容姿、服装、行動、そして周囲の環境などを、具体的かつ感覚的に描写しています。
特に、パリの街並み、社交界の華やかさ、そして貧困層の生活などは、写実的な筆致で描かれ、読者はまるで19世紀後半のパリにタイムスリップしたかのような臨場感を味わうことができます。
また、モーパッサンは比喩や象徴を効果的に用いることで、登場人物の心情や社会の矛盾をより鮮やかに浮かび上がらせています。