モリエールの人間嫌いが扱う社会問題
モリエールの時代背景
17世紀フランスはルイ14世の治世下、絶対王政の華やかな時代でしたが、その裏では厳しい階級社会、宮廷内の権力闘争、上流階級における虚栄や欺瞞が横行していました。モリエール自身も役者として宮廷に出入りする中で、そうした社会の矛盾や人間の滑稽さを目の当たりにしてきました。
人間嫌いの主人公 アルセスト
「人間嫌い」の主人公アルセストは、当時の社会における偽善や欺瞞を激しく憎む人物として描かれています。彼は正直さや誠実さを何よりも重んじ、社交界の人々のうわべだけの付き合い、お世辞、陰口などに嫌悪感を抱きます。
社会問題への痛烈な風刺
アルセストの言動は、当時のフランス社会に対する痛烈な風刺となっています。彼は、上流階級の人々の空虚な会話、形式的な礼儀作法、保身のために真実を曲げる態度などを容赦なく批判します。彼の辛辣な言葉は、観客に自分たちの行動を振り返らせ、社会全体の欺瞞性を浮き彫りにします。
恋愛と結婚における虚偽
「人間嫌い」は恋愛劇の要素も持ち合わせており、アルセストとセリーメーヌの恋愛模様を通して、当時の結婚観や恋愛における偽善も描かれています。アルセストはセリーメーヌの美しさに惹かれながらも、彼女が社交界の習慣に染まっていることに苦悩します。彼は、恋愛においても誠実さや真実の愛を求めますが、それは当時の社会通念とは相容れないものでした。
人間関係における本音と建前
アルセストの徹底した正直さは、彼を取り巻く人間関係にも波紋を広げます。彼は友人や恋人に対しても、忖度することなく自分の意見をぶつけます。その結果、彼は周囲の人々から「人間嫌い」と見なされ、孤立していくことになります。これは、本音を隠して円滑な人間関係を築くことが求められる社会において、正直であることの難しさを浮き彫りにしています。
普遍的な社会問題
モリエールが「人間嫌い」で描いた社会問題は、17世紀フランスという特定の時代や社会に限ったものではありません。人間関係における本音と建前、恋愛や結婚における理想と現実、社会における正義と不条理といった問題は、現代社会にも通じる普遍的なものです。