## メンガーの国民経済学原理と人間
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メンガーの国民経済学原理とは
カール・メンガーは、19世紀オーストリアの経済学者であり、限界効用理論の創始者の一人として知られています。彼の主著『国民経済学原理』(1871年)は、経済学における限界革命の出発点とされ、現代経済学の基礎を築いた重要な著作として位置づけられています。
本書でメンガーは、経済現象を人間の欲求と財の希少性との関係から説明しようと試みました。彼は従来の古典派経済学が重視した労働価値説を批判し、財の価値はそれを消費することによって得られる主観的な満足、すなわち「効用」によって決まると主張しました。
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人間の行動原理:欲求と充足
メンガーは、人間のあらゆる行動は欲求を充足し、満足を得ようとする経済活動であると捉えました。人間は様々な欲求を抱えており、その欲求を満たすために財やサービスを消費します。
彼は財を、人間の欲求を満たすことができる「財貨」と、財貨を生み出すための手段となる「生産財」に分類しました。そして、財の価値は、それがどれだけの効用をもたらすかによって決まると考えました。
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限界効用と価値の法則
メンガーは、財の価値を決定づける上で「限界効用」の概念を導入しました。限界効用とは、ある財を一定期間内に追加的に消費することによって得られる効用の増加分を指します。
彼は、人間の欲求は無限である一方、財は希少であるため、人間はより多くの効用を得られるように財を消費すると考えました。そして、同一の財を連続して消費していくと、得られる効用は次第に減少し、ついには飽和点に達するという「限界効用逓減の法則」を提唱しました。
メンガーは、財の価値はこの限界効用によって決定されると主張しました。つまり、ある財の価格は、人々がその財の最後の単位から得られると予想する限界効用に基づいて決定されるということです。
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経済計算と価格メカニズム
メンガーは、価格メカニズムが個人の経済活動を調整し、社会全体の資源配分を効率的に行う上で重要な役割を果たすと考えました。
人々は価格を参考にしながら、自身の欲求と財の希少性を比較検討し、消費や生産の意思決定を行います。そして、市場における需要と供給の関係を通じて価格が変動することで、資源はより必要とされる用途に効率的に配分されていくと考えました。
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メンガーの思想の現代への影響
メンガーの思想は、後の経済学者たちに大きな影響を与え、現代経済学の基礎となる重要な概念を提示しました。彼の限界効用理論は、現代のミクロ経済学、価格理論、消費者行動理論などの発展に大きく貢献しています。
また、市場メカニズムの重要性を強調した彼の考え方は、自由主義経済思想の基礎となり、現代の市場経済システムを理解する上でも重要な示唆を与えています。