メルヴィルの白鯨の話法
語り手
「白鯨」の語り手は、物語の冒頭で “Call me Ishmael”（僕をイシュマエルと呼んでくれ）と名乗る人物です。イシュマエルは一人称で語り、物語の中心人物であるエイハブ船長と、彼が執拗に追う白いクジラ、モビー・ディックについて語ります。
物語の視点
物語は、主にイシュマエルの一人称視点で語られます。彼は、自分の経験、考え、感情を詳細に描写します。しかし、イシュマエルは全知の語り手ではありません。そのため、他の登場人物の思考や感情、また、彼自身が直接目撃していない出来事については、推測や伝聞を交えて語られることもあります。
文体
メルヴィルは、「白鯨」において、壮大で詩的な文体を使用しています。聖書の引用、シェイクスピア劇からの引用、航海用語、鯨に関する詳細な説明などが、物語全体にちりばめられています。この複雑で多様な文体は、物語に深みと重厚さを与えています。
物語構造
「白鯨」は、一見、単純な復讐の物語として読むことができます。しかし、その構造は非常に複雑で、様々なエピソードや逸話が織り交ぜられています。例えば、鯨に関する学術的な考察、聖書の解釈、船員たちの日常生活、エイハブ船長の過去などが、本筋とは直接関係ないように見えても、物語全体に独特のリズムと奥行きを与えています。
象徴主義
「白鯨」は、象徴主義を駆使した作品としても知られています。白いクジラ、モビー・ディックは、自然の力、悪、神の意志など、様々な解釈が可能な象徴として描かれています。また、エイハブ船長の復讐心や、イシュマエルの心の旅路も、象徴的な意味合いを持つと考えられます。