## メルヴィルの白鯨の表現
象徴
メルヴィルの『白鯨』では、様々な事物や人物が象徴的に描かれている点が特徴的です。
* **白鯨（モビィ・ディック）：**単なる白い鯨ではなく、エイハブ船長にとっては復讐の対象であり、執念の象徴。一方、自然の圧倒的な力や人間の理解を超えた存在、更には神や運命そのものを象徴するとも解釈されています。
* **エイハブ船長：**片足を奪った白鯨への復讐に燃える、狂気じみた執念を持つ船長。鯨に支配された人間の業や、自然に挑戦する人間の傲慢さを象徴する存在として描かれています。
* **イシュメール：**物語の語り手である、唯一生き残った船員。理性的な視点を持つ一方、鯨やエイハブ船長に惹かれる矛盾も抱えています。人間社会から離れ、海という未知の世界に足を踏み入れる人間の姿を象徴していると考えられます。
比喩表現
『白鯨』では、壮大な海の描写や登場人物の心情を表現するために、様々な比喩表現が用いられています。
* **直喩：**「～のように」「～のごとく」などの言葉を用いて、他の物事にたとえる表現。「海は巨大な鏡のように静まり返っていた」のように、直接的な比較によって情景を鮮やかに描き出します。
* **隠喩：**「～は～である」という形式で、他の物事にたとえる表現。「彼の心は荒れ狂う海だった」のように、直接的な比較を用いずに、対象をより抽象的に表現します。
* **擬人化：**人間以外の物事に、人間の性質や行動をあたえる表現。「波が船に襲いかかってきた」のように、自然現象に人間の感情や意志を投影することで、より臨場感のある描写を生み出します。
文体
メルヴィルは『白鯨』において、独特な文体を使用しています。
* **聖書的な文語調：**旧約聖書から影響を受けた、格調高く詩的な文語調が特徴です。「汝」「～なり」といった古風な表現や、重厚なリズムを持つ文章によって、壮大なスケール感と神聖な雰囲気を醸し出しています。
* **詳細な描写：**鯨の生態や捕鯨の様子、船の構造など、専門的な知識を盛り込んだ詳細な描写が特徴です。綿密な観察に基づいたリアリティのある描写によって、読者を物語の世界に引き込みます。
* **多様な語彙：**日常的な言葉から専門用語、古語、造語まで、非常に幅広い語彙が用いられています。豊富な語彙を用いることで、登場人物の性格や感情、情景描写などをより豊かに表現しています。