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メルヴィルの白鯨の思想的背景

メルヴィルの白鯨の思想的背景

19世紀アメリカの思想的潮流

メルヴィルが「白鯨」を執筆した19世紀半ばのアメリカは、大きく発展を遂げながらも、様々な社会問題や思想的な変革が渦巻く時代でした。

* **超越主義:** エマーソンやソローに代表される超越主義は、理性や伝統を超えた人間の直感や自然との融合を重視しました。メルヴィル自身も超越主義の影響を受けたとされていますが、その思想には批判的な面も見られます。「白鯨」においても、エイハブ船長が自然の力に対して抱く執念と、自然の圧倒的な力との対比には、超越主義に対するメルヴィルの複雑な感情が反映されていると考えられています。
* **民主主義の隆盛と矛盾:** 当時のアメリカは民主主義国家として発展を遂げていましたが、一方で奴隷制や貧富の格差など、多くの矛盾も抱えていました。メルヴィルはこうした社会の矛盾にも目を向け、人間の持つ光と影、善と悪の両面を描写しました。
* **産業革命の影響:** 産業革命の進展は、人々の生活様式や価値観を大きく変えました。大量生産や効率化が重視される一方で、自然破壊や人間の疎外といった問題も生じました。エイハブ船長が率いる捕鯨船は、当時の産業社会の縮図として捉えることもできます。

メルヴィル自身の経験

メルヴィルは「白鯨」執筆前に、船乗りとして世界各地を旅した経験を持っていました。過酷な航海や異文化との接触は、彼の作品に大きな影響を与えています。

* **捕鯨の現実:** メルヴィルは実際に捕鯨船に乗り込み、過酷な労働や鯨との死闘を経験しました。こうした経験は「白鯨」のリアリティを生み出す基盤となっています。
* **海洋と自然への畏怖:** 広大な海を旅する中で、メルヴィルは自然の雄大さと脅威を肌で感じました。彼の作品には、自然への畏怖と同時に、人間の力では抗えない運命や神秘に対する深い洞察が表現されています。

聖書や文学の影響

メルヴィルは聖書や古典文学にも造詣が深く、彼の作品には多くの引用や寓意が込められています。

* **聖書のモチーフ:** 「白鯨」には、ヨナやヨブ記など、聖書の物語を彷彿とさせるモチーフが多数登場します。復讐に燃えるエイハブ船長は、神の意志に逆らいながらも抗い続ける人間の象徴として描かれているとも解釈されています。
* **シェイクスピアの影響:** メルヴィルはシェイクスピアを敬愛しており、「白鯨」にもその影響が色濃く反映されています。特に、エイハブ船長は「リア王」や「マクベス」といったシェイクスピア劇の登場人物と共通する、悲劇的な英雄像として描かれていると言えます。

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