## メルヴィルの白鯨に匹敵する本
###
「ユリシーズ」 ジェイムズ・ジョイス
ジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」は、1922年に出版された、20世紀モダニズム文学を代表する記念碑的作品です。ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」をモチーフに、ダブリンを舞台に1904年6月16日の一日の出来事を、主人公レオポルド・ブルームとその周りの人々の視点から、意識の流れの手法を用いて克明に描いています。
「ユリシーズ」は、「白鯨」と同様に、その文学的実験性、複雑な構成、膨大な量で知られています。
* **文学的実験性:** ジョイスは、意識の流れ、内部独白、多種多様な文体、神話的並行など、当時としては革新的な文学技法を駆使し、人間の意識や経験の複雑さを表現しようと試みました。
* **複雑な構成:** 小説は、18のエピソードから成り、それぞれが異なる文体、視点、象徴、対応関係を持つなど、非常に複雑な構成になっています。
* **膨大な量:** 文庫本で1000ページを超える大作であり、読破には相当な時間と労力を要します。
「白鯨」がエイハブ船長の執念と復讐の物語である一方、「ユリシーズ」は、日常的な出来事の中に潜む人間の意識の深淵を探求する作品と言えるでしょう。両作品とも、出版当初は難解でスキャンダラスなものと捉えられましたが、時代を経るにつれて、文学史上に燦然と輝く金字塔として、多くの作家や読者に影響を与え続けています。