## メリアムの政治権力の対称性
###
メリアムの政治権力における対称性の概念
ロバート・A・ダールは、1957年の論文「権力の概念について」の中で、政治学における権力概念を批判的に分析しました。ダールは、権力を行使するAと権力を行使されるBの関係に焦点を当て、AがBに対して望ましい行動を取らせることができる場合にAはBに対して権力を持つと定義しました。この定義は、権力を一方的な関係として捉えるものであり、AとBの間に存在する可能性のある対称性については考慮していません。
チャールズ・E・メリアムは、ダールの権力概念を批判し、政治権力は本質的に対称的なものであると主張しました。メリアムは、著書「政治権力」（1934年）の中で、権力は常に相互作用であり、一方的な関係として捉えることはできないと述べています。メリアムによれば、AがBに対して権力を持つためには、BもAに対して何らかの影響力を持たなければなりません。
メリアムは、権力の対称性を説明するために、以下の3つの要素を提示しました。
1. **相互依存:** AとBは、互いに相手の行動に依存しています。AがBに対して権力を行使するためには、BがAの要求に応じる必要があるからです。しかし、Bもまた、Aの要求に応じることで、Aに対して影響力を持つことができます。
2. **資源の不平等:** AとBは、必ずしも同じ量の資源を持っているわけではありません。AがBよりも多くの資源を持っている場合、AはBに対してより大きな影響力を持つ可能性があります。しかし、Bもまた、Aが欲しがる資源を持っている可能性があり、その場合はBもAに対して影響力を持つことができます。
3. **戦略的行動:** AとBは、自分の利益を最大化するために、戦略的に行動します。Aは、Bに対して権力を行使するために、さまざまな戦略を用いることができます。しかし、Bもまた、Aの戦略に対抗するために、独自の戦略を用いることができます。
メリアムは、これらの3つの要素が相互に作用することで、政治権力の対称性が生まれると主張しました。権力は、一方的な関係ではなく、常に相互作用であり、AとBの両方が相手の行動に影響を与える可能性があると述べています。
メリアムの政治権力における対称性の概念は、権力の性質についての理解を深める上で重要な貢献をしました。彼の分析は、権力は一方的な支配関係ではなく、相互依存と戦略的行動に基づく複雑な現象であることを示しています。