ミルトンの失楽園のテクスト
ミルトンと失楽園
ミルトンは、イングランド内戦期から王政復古期にかけて生きた詩人・思想家である。共和主義者として政治活動にも携わったが、晩年は失明し、政治的な敗北も経験した。そのような中で執筆されたのが、彼の代表作である長編叙事詩『失楽園』である。
叙事詩の形式
『失楽園』は、古代ギリシャの詩人ホメロスにならい、空白詩（韻律は弱強五歩格だが、脚韻を踏まない詩）で書かれた叙事詩である。当時の文学界では、英雄を歌い上げる叙事詩が主流であったが、『失楽園』は、聖書を題材に、人間最初の罪であるアダムとイブの楽園追放を物語るという点で、従来の叙事詩の枠を超えた作品であった。
テーマ
『失楽園』の主要なテーマの一つは、「人間の自由意志」である。神から自由意志を与えられたアダムとイブは、サタンの誘惑に負け、禁断の果実を食べてしまう。この選択によって、彼らは楽園を追放され、罪と死の世界へと落とされることになる。ミルトンは、人間の自由意志と、それによって生じる結果を、壮大なスケールで描いている。
登場人物
『失楽園』には、聖書から引用された人物だけでなく、ミルトン自身の創造による人物も登場する。主な登場人物は以下の通りである。
* **神**: 全知全能の存在であり、天地万物を創造した。
* **サタン**: かつては天使であったが、神に反逆し、地獄に落とされた。アダムとイブを誘惑し、神の計画を妨害しようと企む。
* **アダム**: 神によって創造された最初の人間。イブを深く愛している。
* **イブ**: アダムの妻。美しく、好奇心旺盛な性格。
文語詩
『失楽園』は17世紀の英語で書かれており、現代の読者にとっては難解な表現も多い。しかし、ミルトンは古典的な教養を背景に、格調高く美しい文語詩を用いて、『失楽園』の世界観を構築している。