## ミルトンの『復楽園』とアートとの関係
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芸術の創造力
『復楽園』では、芸術と創造行為が神と人間の創造主としての力に結び付けられています。神は世界を「言葉」によって創造し、人間は神の似姿として創造され、同様に想像力と創造力を与えられています。作中で、サタンはパンデモニウム宮殿の建築や、後にエバを誘惑する際に美しい言葉を用いることを通して、堕落した形ではあるものの、この創造性を示しています。
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視覚芸術の不在
興味深いことに、『復楽園』では絵画や彫刻といった視覚芸術はほとんど登場しません。これは、ミルトンが偶像崇拝を強く批判していたことと関連していると考えられています。ミルトンにとって、視覚芸術は誤った偶像を生み出し、真の神への信仰から人々を遠ざける可能性がありました。
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詩の力
『復楽園』自体は、詩という形で表現された芸術作品です。ミルトンは、自身の詩を通して、失楽園という物語を語り継ぎ、読者に善悪、自由意志、神の摂理といった重要なテーマについて考えさせることを目指しました。この意味で、『復楽園』は、詩が持つ道徳的、教育的な力を強く示す作品だと言えます。
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音楽と歌
音楽と歌は、『復楽園』において重要な役割を果たしています。天国の天使たちは神の栄光を讃える歌を歌い、アダムとエバもまた楽園で神への賛美歌を歌います。一方、サタンは音楽を堕落させ、誘惑の道具として使おうとします。音楽は、作中における善と悪、天国と地獄の対比を際立たせる要素として機能しています。