ミルの自由論の構成
第一章 序論
本章では、本書全体を通じて論じられる「市民社会と個人の関係」というテーマについて、それが歴史的にどのように変遷してきたのかを概観します。
まず、個人が権力を持つ者による支配に対抗するため、自由の保障を求めてきた歴史を説明します。そして、民主制の時代においては、支配者と被支配者の区別が曖昧になることで、多数派による専制という新たな問題が生じるとミルは指摘します。
最後に、本書の主題を明確化します。それは、個人と社会の関係を適切に捉え直し、個人の自由を保障するための原則を明らかにすることです。
第二章 思想と討論の自由について
本章では、思想と討論の自由について、それがなぜ重要なのかを詳細に論じます。
ミルは、たとえ誤った意見であっても、自由に表現され議論されることで、真理に到達するための道が開かれると主張します。反対に、意見の表明が抑圧されると、真理は活力と活力を失い、社会の発展が阻害されるとします。
さらに、部分的に正しい意見や誤った意見であっても、議論を通じてその真偽が吟味される過程で、人々は自らの意見をより深く理解し、確信を深めることができると主張します。
第三章 個性の自由について
本章では、思想や討論の自由だけでなく、個人が自らの幸福を追求する自由についても重要性を説きます。
人間は機械ではなく、それぞれが異なる個性や能力、願望を持った存在であるため、画一的な規則や慣習に押し込められるべきではないとミルは主張します。個人が自由に選択し、行動することで、多様な才能が開花し、社会全体が発展すると考えます。
本章では、個性の自由を尊重することの重要性を、功利主義の観点からも論じています。個人が自由に生きることが、社会全体の幸福の増大にもつながると主張しています。
第四章 社会による個人に対する権力の限界について
本章では、個人の自由を保障するために、社会が個人に対して持つ権力の範囲を明確化します。
ミルは、他者に危害を加える可能性のある場合を除き、個人の行動に対して社会が介入することは正当化されないと主張します。これは、「他人に危害を加えない限り、個人は自分のしたいようにしてよい」という、いわゆる「危害原則」として知られています。
本章では、個人の自由を制限する可能性のある様々な状況を検討し、危害原則に基づいて社会が介入すべき範囲を具体的に論じています。
第五章 適用について
本章では、前章で示した「危害原則」を具体的な問題に適用し、個人の自由と社会の介入の境界線を考察します。
具体的には、経済活動、言論の自由、飲酒、賭博、売春などの問題について、個人の自由を尊重すべき範囲と、社会が介入すべき範囲を具体的な事例を挙げながら検討していきます。
本章は、ミルの自由論の中でも特に実践的な内容となっており、現代社会における様々な問題を考える上でも示唆に富んだ議論が展開されています。