## ミルの代議制統治論の主題
代表制政府の理想と現実
ジョン・スチュアート・ミルが1861年に発表した『代議制統治論』は、名著の誉れ高く、今日でも民主主義の理論と実践を考える上で必読の書とされています。本書でミルは、古代ギリシャ以来、理想とされてきた民主主義の概念を、近代社会の複雑な現実と照らし合わせながら、多角的に分析しています。
統治の二つの原則:人民の意思と統治の質
ミルは、統治には「人民の意思の反映」と「質の高い統治の実現」という二つの重要な原則があると主張します。前者は、被治者の同意に基づかない政府は正当化されず、人民の意思が統治に反映されるべきという考え方を示しています。後者は、単に人民の意思が反映されれば良いのではなく、社会全体の幸福や進歩を促進するような、質の高い統治が実現される必要があるという考え方を示しています。
代議制政府:現代社会における最良の統治形態
ミルは、大規模で複雑な現代社会において、この二つの原則を最も良く両立させる統治形態こそが代議制政府であると主張します。直接民主主義では、全ての人々が政治に参加することが難しく、また、専門知識や経験を持つ統治者の育成も困難になります。一方、代議制政府では、人民は自分たちの代表者を選出し、政治的意思決定を委ねることができます。そして、代表者は人民全体の利益を考慮しながら、専門的な知識と経験に基づいた政策決定を行うことができます。
理想的な代議制政府の条件
ミルは、代議制政府がその機能を十分に発揮し、理想的な統治形態となるためには、いくつかの重要な条件が必要であると述べています。