## ミュルダールのアジアのドラマの技法
### １．価値負荷のない客観的な観察に基づく分析手法
ミュルダールは、「アジアのドラマ」の中で、西洋の価値観や偏見を排除し、アジア社会を客観的に観察することに重点を置いています。彼は、西洋の社会科学の枠組みをアジアに当てはめるのではなく、アジア社会の独自の構造や歴史的背景を理解しようとしました。
### ２．制度分析と統計データの組み合わせ
ミュルダールは、アジアの貧困や経済発展の問題を分析するにあたって、制度分析と統計データを組み合わせる手法を用いています。彼は、土地所有制度、教育制度、カースト制度といった社会制度が、経済発展にどのような影響を与えているかを詳細に分析しました。また、膨大な統計データを駆使し、貧困や不平等の現状を明らかにしようとしました。
### ３．「循環的累積的因果関係」の概念
ミュルダールは、「アジアのドラマ」の中で、「循環的累積的因果関係」という概念を提唱しました。これは、貧困や不平等が、さまざまな要因によって複雑に絡み合い、悪循環を生み出すという考え方です。例えば、低所得は低貯蓄、低投資、低生産性につながり、それがさらに低所得を招くという悪循環に陥ると指摘しました。
### ４．「ソフト・ステート」の概念
ミュルダールは、アジア諸国における政府の役割にも注目し、「ソフト・ステート」という概念を提唱しました。これは、汚職や縁故主義が横行し、法の執行が緩い状態を指します。彼は、「ソフト・ステート」が、経済発展を阻害する要因の一つであると指摘しました。