## マーシャルの経済学原理の位置づけ
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出版と時代背景
アルフレッド・マーシャルの主著『経済学原理』(Principles of Economics)は、1890年に初版が出版されました。この時代は、19世紀後半から20世紀初頭にかけての経済学にとって大きな転換期にあたり、古典派経済学から近代経済学への移行期とされています。
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古典派経済学と新古典派経済学の橋渡し
『経済学原理』は、アダム・スミス、デヴィッド・リカードなどの古典派経済学の考え方を継承しつつ、限界革命などの新しい学説を取り入れることで、近代経済学の基礎を築いたと評価されています。
具体的には、需要と供給を分析の中心に据え、価格が需要と供給の相互作用によって決定されるとする「均衡価格理論」を体系化しました。これは、古典派経済学が重視した供給面だけでなく、需要面も同様に重視した点で画期的でした。また、限界効用や限界費用などの概念を導入し、経済主体の行動をよりミクロな視点から分析しました。
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経済学における標準的な教科書としての地位
『経済学原理』は、出版後まもなく経済学の標準的な教科書としての地位を確立し、20世紀前半の経済学教育に大きな影響を与えました。特に、ミクロ経済学の基礎を築いた点が高く評価されています。
明快な文章と論理的な構成、そして現実の経済現象を説明するための豊富な事例を用いたことで、『経済学原理』は多くの読者に受け入れられました。その結果、経済学を学ぶ学生だけでなく、経済問題に関心を持つ一般の人々にも広く読まれるようになりました。
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現代経済学への影響
今日では、限界革命の進展やケインズ経済学の登場などにより、マーシャルの経済学理論がそのままの形で受け入れられているわけではありません。しかしながら、『経済学原理』で展開された需要と供給の分析、均衡価格理論、弾力性の概念などは、現代経済学においても重要な分析ツールとして用いられています。
また、経済学を数学的に厳密に分析する手法を導入した先駆的な著作としても評価されています。マーシャル自身は、数学を複雑な数式ではなく、経済理論を分かりやすく説明するためのツールとして用いました。
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批判と限界
『経済学原理』は、画期的な著作であった一方で、いくつかの批判も指摘されています。例えば、完全競争市場や合理的経済人を前提とした分析は、現実の経済を十分に反映していないという批判があります。また、所得分配の問題や経済成長のメカニズムについては、十分な分析がなされていないという指摘もあります。
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