## マーシャルの経済学原理のメカニズム
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需要と供給
アルフレッド・マーシャルの経済学原理の中核を成すのは、需要と供給の力によって価格が決定されるという考え方です。 需要は消費者の財やサービスに対する欲求とそれを購入する能力を、供給は生産者の財やサービスを生産し、市場に提供する意思を表しています。
マーシャルは、需要と供給を「はさみの両刃」に例え、両者が相互に作用して均衡価格を決定すると説明しました。 需要量が多ければ価格は上昇し、供給量が多ければ価格は下落します。 そして需要と供給が一致する点で均衡価格が決定され、市場は一時的な均衡状態に至ります。
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限界効用理論
需要側からは、限界効用理論が重要な役割を果たします。 この理論は、消費者が財やサービスを消費するにつれて、得られる追加的な満足度(限界効用)は逓減していくと説明します。 つまり、最初の1単位を消費したときにもっとも大きな満足を得られ、消費量が増えるにつれて満足度は徐々に低下していきます。
消費者は限られた所得の中で最大の満足を得るように行動するため、限界効用と価格を比較検討します。 財の限界効用が価格を上回る限り、消費者はその財を購入し続けます。 そして限界効用と価格が一致する点で消費量は決定されます。
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生産費用
供給側からは、生産費用が供給量を決定する主要な要因となります。 生産者は利潤を追求するため、生産費用を上回る価格で財やサービスを供給しようとします。 生産費用には、賃金、地代、資本費用などの要素が含まれます。
マーシャルは、生産量が増加するにつれて、一定の期間内では限界費用(追加的に1単位生産するのにかかる費用)は増加していくと説明しました。 これは、生産要素の有限性や効率性の低下などが原因として考えられます。 生産者は限界費用と価格を比較し、限界費用が価格を下回る限り生産量を増やし続けます。 そして限界費用と価格が一致する点で供給量が決定されます。
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時間の要素
マーシャルは、経済分析において時間の要素を重視しました。 彼は時間を「市場期間」「短期」「長期」の3つに分け、それぞれの期間における需要と供給の働き方の違いを分析しました。
* **市場期間**:供給量が固定されている非常に短い期間。
* **短期**:一部の生産要素(例えば労働力)は調整可能だが、他の要素(例えば資本設備)は固定されている期間。
* **長期**:すべての生産要素が調整可能な期間。
それぞれの期間において、価格弾力性(価格の変化に対する需要量または供給量の反応度合い)は異なり、市場メカニズムもそれに応じて変化します。
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部分均衡分析と一般均衡分析
マーシャルは、経済全体を分析する「一般均衡分析」よりも、個々の市場に焦点を当てた「部分均衡分析」を重視しました。 これは、当時の経済学が複雑な現実の経済を分析するには未発達であり、まずは個々の市場のメカニズムを解明することが重要だと考えたためです。
部分均衡分析では、他の市場との相互作用を無視して、特定の市場における需要と供給のみに焦点を当てます。 これは、現実の経済を単純化することで分析を容易にする一方、他の市場への波及効果などを考慮できないという限界も抱えています。
これらの基本的なメカニズムに加えて、マーシャルは、外部経済効果、規模の経済、時間選好など、経済学の様々な概念を分析し、後の経済学の発展に大きな影響を与えました。
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