## マルクス／エンゲルスのドイツ・イデオロギーの選択
マルクスとエンゲルスの共著として知られる「ドイツ・イデオロギー」ですが、実際には出版に至らず、長い間未発表の原稿として保管されていました。一体なぜこの著作は出版されなかったのでしょうか？
当時のマルクスとエンゲルスを取り巻く状況や、彼ら自身の思想的な変遷を考慮すると、いくつかの要因が考えられます。
第一に、1845年から1846年にかけて執筆された「ドイツ・イデオロギー」は、当時のドイツ思想界を風靡していたヘーゲル左派に対する批判を展開したものでした。しかし、マルクスとエンゲルスはこの批判を書き進める過程で、ヘーゲル左派の思想を超え、独自の唯物史観を明確化させていきます。
第二に、マルクスとエンゲルスは、「ドイツ・イデオロギー」の執筆後、より直接的にプロレタリアートに訴えかけるための政治活動に重点を置くようになります。そのため、「ドイツ・イデオロギー」のような難解な哲学的論争よりも、実践的な政治パンフレットの執筆や労働者組織の結成に力を入れる必要性を感じていた可能性があります。
第三に、マルクスとエンゲルスは、「ドイツ・イデオロギー」を出版する際に、検閲などの政治的な障壁に直面した可能性も考えられます。当時のドイツでは、社会主義思想に対する弾圧が厳しく、出版が困難な状況でした。
結果として、「ドイツ・イデオロギー」はマルクスとエンゲルスが生前に出版することはありませんでした。しかし、この著作は20世紀に入ってから発見され、出版されることになります。
1920年代から1930年代にかけて、ソ連邦のマルクス・エンゲルス研究所によって「ドイツ・イデオロギー」の原稿が発見され、部分的に出版されました。その後、1950年代から1960年代にかけて、より完全な版が出版され、世界中の研究者に読まれるようになりました。
「ドイツ・イデオロギー」は、マルクスとエンゲルスの初期の思想を理解する上で重要な著作とされています。特に、唯物史観の形成過程や、イデオロギー論、疎外論などの重要な概念が展開されている点が注目されています。