マルクスの資本論の関連著作
アダム・スミス「国富論」
「資本論」を考察する上で避けて通れないのが、アダム・スミスの主著「国富論」です。1776年に出版された本書は、近代経済学の古典として知られており、資本主義のメカニズムを体系的に分析した画期的な著作でした。
スミスは「労働」こそが富の源泉であると主張し、分業による生産性の向上や、市場メカニズムの重要性を説きました。「見えざる手」と呼ばれる概念は、個々の経済主体が自身の利益を追求することで、結果的に社会全体の利益にもつながるという考え方を表しています。
マルクスはスミスの労働価値説を継承しつつも、資本家の利潤は労働者の搾取によって生み出されると批判しました。スミスの「国富論」は、マルクス経済学の出発点となった重要な著作と言えるでしょう。
デヴィッド・リカード「経済学および課税の原理」
1817年に出版された「経済学および課税の原理」は、古典派経済学を代表するもう一つの名著です。著者のリカードは、本書の中で比較優位論や地代論といった重要な経済理論を展開しました。
リカードは、国際貿易において、各国がそれぞれ得意とする分野の生産に特化することで、互いに利益を得られることを示しました。また、土地の希少性から生じる地代が、経済成長を阻害する要因になると論じています。
マルクスはリカードの経済理論を高く評価し、自身の経済理論の構築にあたり、その多くを援用しました。特に、資本主義社会における階級対立や、利潤率の低下傾向といった問題意識は、リカードの影響を強く受けています。
ヴェルナー・ゾンバルト「近代資本主義」
1902年から1927年にかけて刊行された「近代資本主義」は、ドイツ歴史学派の経済学者ヴェルナー・ゾンバルトによる、資本主義の起源と発展を歴史的に分析した大著です。
ゾンバルトは、資本主義を単なる経済体制ではなく、精神的・文化的側面をも包含する複合的な現象として捉えました。彼は、近代資本主義の形成において、宗教改革やルネサンスといった思想・文化運動が重要な役割を果たしたと論じています。
マルクスは資本主義を唯物史観に基づいて分析しましたが、ゾンバルトは歴史的・文化的要因を重視した点で対照的です。しかし、資本主義の起源や本質に関する問題意識を共有しており、「資本論」と比較検討する上で重要な著作と言えるでしょう。