## マリノフスキの「西太平洋の遠洋航海者」とアートとの関係
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マリノフスキの民族誌におけるアートの記述
マリノフスキの「西太平洋の遠洋航海者」は、メラネシアのトロブリアンド諸島における人々の生活、特に経済活動と社会構造に焦点を当てた民族誌です。この著作でマリノフスキは、彼らの文化を包括的に理解しようとする中で、アートについても言及しています。
彼は、トロブリアンド諸島における彫刻、装飾品、身体装飾などを詳細に記録し、それらが単なる美的表現ではなく、社会的な機能や意味を持つことを明らかにしました。例えば、彼らの作る精巧な木彫りの舟は、航海の安全と成功を祈願する儀式や、社会的地位を示すために用いられました。
また、マリノフスキは、彼らの作る装飾品や身体装飾が、年齢、性別、社会的地位などの社会的な差異を示す重要な手段であることを指摘しています。これらのアート作品は、彼らの社会構造を視覚的に表現する役割を果たしていたと言えるでしょう。
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アートとク―ラ交換システムの関係性
マリノフスキの「西太平洋の遠洋航海者」で最も有名なのは、彼が詳細に記述した「ク―ラ」と呼ばれる交換システムです。ク―ラは、ネックレスや腕輪などの貴重な装飾品を、広範囲にわたる島々間で交換する複雑な社会経済システムです。
マリノフスキは、ク―ラ交換を通して人々が社会的な絆を築き、維持していく様子を明らかにしました。この交換システムにおいて、装飾品は単なる物々交換の品物ではなく、社会的な関係性や権威を象徴する重要な役割を担っていました。
これらの装飾品は、その美的価値と希少性によって評価され、所有者や贈り主の社会的地位を示すものでした。マリノフスキは、ク―ラ交換における装飾品の役割を分析することで、トロブリアンド諸島の人々の社会構造や価値観を深く理解しようと試みました。
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アートに対するマリノフスキの視点
マリノフスキは、「西太平洋の遠洋航海者」の中で、トロブリアンド諸島の人々のアートを、彼らの文化や社会構造と密接に結びついたものとして捉えました。彼は、アート作品を単なる美的対象としてではなく、社会的な機能や意味を持つものとして分析しました。
マリノフスキのアートに対する視点は、当時のヨーロッパ中心的な美術観とは一線を画していました。彼は、西洋美術の概念にとらわれずに、トロブリアンド諸島の人々の文化や社会構造を理解するための重要な手がかりとして、アート作品を分析しました。