マクルーハンの人間拡張の原理に匹敵する本
マーシャル・マクルーハン「メディア論」
「人間拡張の原理」と同様に、メディアが人間や社会に与える影響について深く考察した書として、マーシャル・マクルーハンの「メディア論」が挙げられます。
本書は、1964年に出版された「グーテンベルクの銀河系」と、1967年に出版された「メディアはマッサージである」の二部構成となっています。「グーテンベルクの銀河系」では、活版印刷術の発明が西洋文明に与えた影響を、文字によるコミュニケーションの変容という観点から分析しています。一方、「メディアはマッサージである」では、活版印刷術に続く電子メディアの登場によって、再び人間の感覚が統合されつつあることを、豊富な事例を交えながら論じています。
マクルーハンは、「メディアはメッセージである」という言葉で知られています。これは、メディアは単なる情報伝達の手段ではなく、それ自体がメッセージであり、人間の思考や行動に大きな影響を与えるという考え方です。彼は、メディアを人間の感覚の拡張と捉え、それぞれのメディアが独自のバイアスを持っていると主張しました。
例えば、活版印刷術は視覚を拡張するメディアであり、線形的な思考や客観的な視点を促進するとされます。一方、電子メディアは聴覚や触覚を含む複数の感覚を同時に刺激するメディアであり、より全体的な思考や主観的な視点を促進するとされます。
「メディア論」は、メディアの特性や影響力を理解する上で重要な視点を提供しており、現代社会においても色あせない価値を持つ名著と言えるでしょう。