ボワソナードの刑法草案註解の主題
ボワソナードの刑法草案註解の主題
「ボワソナードの刑法草案註解」は、フランス人法学者ギュスターヴ・エミール・ボアソナードが、明治初期の日本政府の依頼を受けて起草した刑法草案「日本刑法草案」に対する詳細な解説書です。その主題は、近代西洋法学、特にフランス刑法典の精神に基づいた刑法体系を日本に導入し、近代的な法典編纂の指針を示すことにありました。
ボアソナードは、この註解の中で、個々の条文の解釈や法的根拠を詳細に解説するだけでなく、当時の日本の社会状況や伝統的な法観念にも言及しながら、西洋法の理念と日本の実情との調和を図ろうとしています。具体的には、以下のような点が挙げられます。
* **刑罰の目的と種類**: 応報刑を否定し、犯罪の予防と犯罪者の矯正を重視する近代刑法の考え方を導入し、死刑の制限や自由刑の導入などを提唱しました。
* **犯罪と刑罰の法定主義**: 罪刑法定主義の重要性を強調し、慣習法による処罰や刑罰の恣意的な適用を排除することを目指しました。
* **責任主義**: 行為者の責任能力に基づいた刑罰を科す原則を明確化し、精神障害者や未成年者の責任能力を限定的に扱うことを提唱しました。
* **正犯と共犯**: 正犯と共犯の概念を明確に区別し、それぞれに応じた刑罰を規定することで、共犯の範囲を限定することを目指しました。
「ボワソナードの刑法草案註解」は、日本の近代法の基礎を築く上で多大な影響を与え、その後の法典編纂や法学研究に大きな影響を与えました。