## ボッカチオのデカメロンの案内
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作品概要
『デカメロン』(Decameron) は、14世紀イタリアの作家ジョヴァンニ・ボッカチオによって著された短編集です。原題は “Il Decameron” で、ギリシャ語で「十日物語」を意味します。1348年から1353年にかけて執筆されたとされ、ペスト禍から逃れるためにフィレンツェ郊外の別荘に集まった10人の男女が、10日間にわたって毎日一人一話ずつ、合計100の物語を語り合うという枠物語の形式をとっています。
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構成
作品は大きく分けて、導入部と本編の物語集の二部構成になっています。
* **導入部**: ペスト禍の惨状と、そこから逃れる10人の男女の出会いが描かれます。
* **物語集**: 10人の語り手によって語られる100の物語で構成されています。各日ごとに異なるテーマが設定されており、恋愛、冒険、機知、教訓などを描いた多様な物語が展開されます。
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登場人物
物語の語り手となる10人の男女は、それぞれ異なる年齢、身分、性格を持っています。
* **女性**: パンピネア、フィアメッタ、エミリア、ラウレッタ、ネーフィレ、エルミニア、フィーロ
* **男性**: パンフィーロ、フィロストラート、ディオネオ
これらの登場人物たちは、物語を語るだけでなく、互いの物語にコメントしたり、議論したりすることで、作品にさらなる奥行きを与えています。
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特徴
『デカメロン』は、以下のような特徴を持つ作品として知られています。
* **多様な物語**: 恋愛、冒険、風刺、教訓など、幅広いテーマを扱った物語が収録されています。
* **写実的な描写**: 当時の社会風俗や人々の生活が生き生きと描かれています。
* **機知に富んだ語り口**: 皮肉やユーモアを交えた軽妙な文体で書かれています。
* **人間性への洞察**: 人間の欲望や弱さを赤裸々に描きつつも、その根底にある生命力や愛を肯定的に捉えています。
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影響
『デカメロン』は、イタリア文学のみならず、ヨーロッパ文学全体に大きな影響を与えた作品として高く評価されています。その後の短編集の形式や、物語のモチーフなどに大きな影響を与えただけでなく、ジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』やウィリアム・シェイクスピアの戯曲など、多くの作品に影響を与えています。