## ボッカチオのデカメロンの批評
文学史における位置付け
14世紀イタリア文学を代表する作品として、またルネサンスの先駆的作品として高い評価を受けています。ペスト禍という未曾有の危機を背景に、人間の生命力や機知、官能性を肯定的に描いた点が、当時の宗教的・道徳的な規範に挑戦するものでした。
物語の構造
100の物語から成る枠物語という構成が特徴的です。ペストから逃れた10人の男女が、10日間にわたって毎日一人一話ずつ物語を語るという設定は、多様な人間模様や社会風刺、恋愛譚などを織り交ぜることを可能にしています。
登場人物
物語を語る10人の男女は、それぞれ異なる身分や性格、価値観を持っています。彼らの会話や人間関係を通して、当時の社会階層や男女観、人生観などが浮かび上がってきます。また、物語に登場する人物たちも、貴族から庶民、聖職者から詐欺師まで実に多彩で、人間のあらゆる側面を描き出しています。
文体と表現
当時の口語であるトスカーナ語を用いた流麗な文体で書かれており、諧謔や皮肉、風刺を交えながら生き生きとした描写が展開されます。性描写に関する大胆さも特徴で、現代の読者にとっても刺激的な部分も少なくありません。
宗教批判
当時のキリスト教社会を風刺するようなエピソードも少なくなく、聖職者の堕落や偽善を痛烈に批判しています。この点は、教会からの弾圧を受ける原因ともなりました。
後世への影響
チョーサーの『カンタベリー物語』やシェイクスピアの戯曲など、後世の文学作品に多大な影響を与えました。また、絵画や音楽、演劇など様々な芸術分野においても、「デカメロン」を題材とした作品が数多く制作されています。
これらの要素が複雑に絡み合い、時代を超えて読み継がれる傑作として、「デカメロン」は評価されています。