## ボアンカレの「科学と仮説」と言語
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言語と科学の関係
アンリ・ポアンカレの著書「科学と仮説」(1902年) は、数学や物理学におけるポアンカレ自身の革新的な研究に基づき、科学における根本的な前提、特に数学と経験科学の関係について考察しています。 本書は、幾何学、力学、物理学の各分野における基本的な概念や原理を分析し、それらがどのように構築され、どのような仮説に基づいているかを明らかにします。
ポアンカレは、科学における言語の役割を重視していました。彼は、科学的な思考は言語と切り離せないものであり、言語が思考を形作り、表現するために不可欠であると認識していました。
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数学における言語の役割
特に、ポアンカレは数学における言語の役割を強調しました。彼は、数学的な概念は、明確に定義された記号や規則に基づいた形式言語によって表現されると主張しました。
彼は、数学的推論は記号の操作規則に従って行われ、その妥当性は記号の形式的な性質によって保証されると考えました。つまり、数学的真理は、言語によって構築されたシステム内の整合性によって保証されるのであり、経験的な世界の観測とは独立していると考えたのです。
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物理学における言語と経験
一方で、ポアンカレは物理学などの経験科学においても言語が重要な役割を果たすと考えていました。物理学では、観測や実験によって得られた経験的事実を説明するために仮説や法則が用いられますが、これらの仮説や法則は言語によって表現されます。
ただし、ポアンカレは、物理学における言語は数学のように完全に形式化されたものではなく、経験的な内容を含むと指摘しました。物理学の言語は、観測や実験を通して得られた経験的な世界についての我々の理解を反映しており、その意味は経験によって修正される可能性があります。