## ベンタムのパノプティコンの選択
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監視と規律
ジェレミー・ベンサムが1785年に提唱したパノプティコンは、中央の監視塔と、その周囲を取り囲むように配置された囚人セルからなる監獄のデザインです。この設計の核心は、囚人は常に監視されている可能性を意識させられる点にあります。監視塔からは全てのセルが見渡せる構造ですが、囚人からは監視塔の中が見えないため、実際に監視されているかどうかは分かりません。
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不確実性による自己規制
この不確実性が、パノプティコンの最大の特徴です。常に監視されている可能性があるという不安から、囚人は規則違反を犯すリスクを冒せなくなり、自己規制を促されることになります。ベンサムはこのシステムを「自己監視の装置」と呼び、刑罰の効率性を高め、同時に費用を抑えられると主張しました。
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権力と知識の非対称性
パノプティコンは、監視者と被監視者の間に権力と知識の非対称性を生み出します。監視者は囚人の行動を常に把握できる一方、囚人は監視されているかどうかも、誰に監視されているのかも分かりません。この情報格差が、囚人の不安を増幅させ、自己規制を促進する要因となります。
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適用範囲の拡大
ベンサムはパノプティコンを監獄のみに留まらず、工場、学校、病院など、あらゆる社会制度への適用を構想していました。彼の構想は、効率性と秩序を重視する近代社会の思想を反映しており、フーコーをはじめとする後の思想家に大きな影響を与えました。
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批判と現代社会における考察
パノプティコンは、その非人間性や、個人の自由を過度に制限する点から多くの批判を受けてきました。現代社会においても、監視カメラやインターネット上の活動履歴など、パノプティコン的な監視システムの存在が議論の的となっています。