## ベルクソンの「時間と自由」の思想的背景
### 1.
19世紀後半の知的風土
ベルクソンの生きた19世紀後半は、ニュートン力学に基づく決定論的な世界観が支配的でした。これは、世界のあらゆる出来事は、初期条件と自然法則によって完全に決定されており、人間の自由意志にも場所がないとする考え方です。
このような状況下、科学主義が隆盛し、人間の精神活動や生命現象までも機械論的に説明しようとする風潮が広がっていました。ベルクソンはこのような風潮に反発し、人間の自由で創造的な側面を擁護しようとしました。
### 2.
科学と哲学の対立
当時の科学、特に物理学においては、時間は空間と同様に均質で可逆的なものとして捉えられていました。これは、過去・現在・未来という時間の流れや、人間の経験する時間の流れを無視したものでした。
ベルクソンは、このような科学の時間観が、人間の自由や創造性を否定するものであると批判しました。彼は、人間の意識体験に基づいた時間論を展開し、時間こそが自由と創造性の源泉であると主張しました。
### 3.
持続と自由
ベルクソンは、人間の意識体験における時間を「持続」と呼びました。持続とは、過去から現在、そして未来へと絶えず流れ行く、非連続的で不可逆的な時間の流れです。
彼は、この持続こそが自由の源泉であると考えました。なぜなら、持続においては、過去は現在の中に生きており、未来はまだ決定されていません。つまり、私たちは過去の経験を踏まえつつ、未来を自由に創造することができるのです。
### 4.
生の哲学
ベルクソンの哲学は、「生の哲学」とも呼ばれます。彼は、生命を機械論的に説明するのではなく、生命そのものが持つ創造的な力、「生の躍動」を重視しました。
この生の躍動は、持続する時間の中で絶えず変化し、進化していく力です。そして、人間は、意識を通してこの生の躍動を最も強く感じる存在であると言えます.