ヘルダーの言語起源論を読んだ後に読むべき本
言語の起源 : 符号の暴力から
ヨハン・ゴットフリート・ヘルダーの『言語の起源論』は、人間の言語の発生に関する思索の金字塔です。ヘルダーは、言語が神から与えられたものではなく、人間自身の内的能力から生み出されたとする、当時としては画期的な主張を展開しました。彼の思想は、後の言語学、哲学、人類学に多大な影響を与えました。
言語の起源 : 符号の暴力から、なぜ読むべきか?
ジャック・デリダの『グラマトロジーについて』は、ヘルダーの言語起源論を批判的に継承し、西洋思想における「音声中心主義」を解体しようと試みた作品です。デリダは、言語の起源を音声に求める考え方は、文字によるコミュニケーションを軽視し、西洋思想におけるロゴス中心主義を強化してきたと批判します。
デリダは、ヘルダーが言語の起源を「反省」という人間の内的能力に求めた点に注目します。ヘルダーにとって、人間は動物と異なり、自身の思考や感情を客観的に捉え返す能力、すなわち「反省」の能力を持っています。そして、この「反省」の能力こそが、言語を生み出す源泉となったとヘルダーは考えました。
しかしデリダは、ヘルダーが「反省」という概念を説明する際に、音声による対話を前提としている点を指摘します。デリダによれば、ヘルダーは「反省」という概念を説明するために、すでに音声言語の存在を前提としてしまっているのです。これは、ヘルダー自身が批判した、言語を神から与えられたものとみなす考え方と同じ過ちを犯している、とデリダは批判します。
デリダは、ヘルダーの言語起源論を批判的に検討することで、西洋思想における音声中心主義の根深さを明らかにしようと試みます。デリダは、言語の起源を音声に限定するのではなく、文字、ジェスチャー、記号など、あらゆるコミュニケーションの形態を包括的に捉える必要があると主張します。
言語の起源 : 符号の暴力から、読むことで得られるもの
『グラマトロジーについて』は、難解なことで知られるデリダの思想の入門書としても最適な一冊です。本書を読むことで、西洋思想における言語観を批判的に捉え直し、言語と文化の関係についてより深く考えることができるでしょう。また、ヘルダーの言語起源論をより深く理解するためにも、本書は大変示唆に富む内容となっています。