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ヘルダーの言語起源論の発想

ヘルダーの言語起源論の発想

ヘルダーの生きた時代背景

ヨハン・ゴットフリート・ヘルダー(Johann Gottfried Herder, 1744-1803)は、ドイツ啓蒙主義の後半期から、ドイツ古典主義の時代にかけて活躍した思想家です。彼は哲学者イマヌエル・カントの教えに感化を受けつつも、独自の思想を展開しました。ヘルダーは言語、歴史、文化を相互に関連づけて捉え、それぞれの民族が独自の言語、歴史、文化を持つことを強調しました。これは、当時のフランスを中心とする啓蒙主義思想が、普遍的な理性や人間性を重視する傾向にあったのとは対照的でした。

言語に対する関心の根源

ヘルダーは、言語を単なる記号体系として捉えるのではなく、人間の思考や精神と密接に結びついたものと見なしました。彼は、言語が人間の思考を形作り、文化を伝達する上で重要な役割を果たすと考えました。この考え方は、当時の言語学において支配的であった、言語を文法規則の体系として分析する立場とは一線を画すものでした。

『人間性の歴史の哲学への諸考察』における言語起源論

ヘルダーの言語起源論は、1772年に出版された著書『人間性の歴史の哲学への諸考察』の中で展開されています。この著作でヘルダーは、人間がどのように言語を獲得したのかという問題について、独自の考察を展開しました。彼は、言語が神によって人間に与えられたとする従来の見解を批判し、人間が自らの力で言語を生み出したと主張しました。

言語発生に関するヘルダーの仮説

ヘルダーは、言語は人間の自然な能力である「反省(Besinnung)」によって生み出されたと考えました。彼は、人間が周囲の音や事物に注意を向け、それらを記憶し、区別する能力を持つことが、言語の発生にとって不可欠であったと主張しました。具体的には、人間が動物の鳴き声や自然の音を模倣することから始め、徐々に抽象的な概念を表す言葉を生み出していったと考えていました。

自然音模倣説との比較

ヘルダーの言語起源論は、しばしば「自然音模倣説」と関連付けられます。しかし、ヘルダー自身は、言語の起源を単純に音の模倣に還元することはできませんでした。彼は、音の模倣は言語発生の初期段階において重要な役割を果たした可能性があることを認めつつも、人間が複雑な文法構造や抽象的な概念を表す言葉を生み出すためには、それ以上の能力が必要であったことを強調しました。

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