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ヘルダーの言語起源論の価値

## ヘルダーの言語起源論の価値

### 言語起源論への新しい視点の提示

ヨハン・ゴットフリート・ヘルダーは、1772年に出版された「言語起源論」の中で、それまでの言語起源論に支配的であった神学的あるいは機械論的な見方を批判し、人間精神の働きと社会性、そして歴史的発展に焦点を当てた独自の言語起源論を展開しました。これは、言語を単なる記号体系としてではなく、人間存在そのものと不可分に結びついたものとして捉える画期的な視点であり、その後の言語学、哲学、人類学などに多大な影響を与えました。

### 言語の創造性を強調

ヘルダーは、言語は神によって与えられたものでも、自然の音を模倣して生まれたものでもなく、人間がその内面的な精神活動、特に「反省」(Besonnenheit)と呼ばれる能力によって、自発的に創造したものであると主張しました。彼は、人間が外界の事物や事象を感覚器官を通じて知覚し、それらを記憶の中で保持し、さらにそれらを比較・分析することで抽象的な概念を形成していく過程において、言語が重要な役割を果たすと考えました。

### 言語と共同体の密接な関係への着目

ヘルダーは、言語の起源と発展には、人間同士の相互作用、すなわち社会性、共同体が不可欠であると強調しました。彼は、人間が言語を用いるのは、単に自分の思考を表現するためだけではなく、他者とコミュニケーションを取り、共通の理解を形成し、社会的な絆を築くためであると考えました。ヘルダーにとって、言語とは、個人を超えた共同体の共有財産であり、歴史的に蓄積され、継承されていく文化の重要な要素でした。

### 比較言語学の先駆的研究

ヘルダーは、さまざまな言語を比較研究することによって、人間の思考や文化の多様性と共通性を明らかにしようと試みました。彼は、言語の構造や語彙には、それぞれの民族の歴史、文化、風土などが反映されていると考え、言語を研究することは、人間の精神史を探求することにつながると主張しました。これは、後の比較言語学や文化人類学の発展に大きな影響を与えました。

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