プルードンの経済的諸矛盾の体系の技法
プルードンの弁証法
プルードンはヘーゲル弁証法を批判的に継承し、独自の弁証法を展開しました。プルードンは、ヘーゲルのように弁証法を精神の運動として捉えるのではなく、現実の社会経済的な矛盾の運動として捉えました。彼は、あらゆる経済現象は、正と反、肯定と否定という対立する二つの側面、すなわち「矛盾」を含んでいると主張しました。
プルードンによれば、これらの矛盾は静止したものではなく、互いに影響し合いながら発展し、新たな矛盾を生み出します。そして、この矛盾の展開こそが社会進歩の原動力となると彼は考えました。プルードンは、この矛盾の展開を明らかにすることによって、資本主義社会の抱える問題点を浮き彫りにしようとしました。
経済学批判における弁証法の適用
プルードンは、自著『経済的諸矛盾の体系、あるいは貧困の哲学』において、当時の経済学を批判的に分析しました。彼は、当時の経済学者が、利己心や競争といった資本主義社会の一面のみを捉え、それを絶対視していると批判しました。
プルードンは、自身の弁証法を用いることで、資本主義経済における様々な矛盾を明らかにしました。例えば、彼は、分業は生産性を向上させる一方で、労働の疎外を生み出すと指摘しました。また、彼は、自由競争は一見平等なように見えて、実際には富の集中と貧困の拡大をもたらすと主張しました。
政治経済学からの脱却
プルードンは、既存の経済学が、資本主義の矛盾を克服するのではなく、それを正当化するものとなっていると批判しました。彼は、真の経済学は、資本主義を超克し、正義と平等を実現する社会の構築に貢献するものでなければならないと考えました。
プルードンは、自らの経済理論を「政治経済学」と対比させて、「貧困の哲学」と呼びました。彼は、貧困を単なる経済的な問題としてではなく、社会の不正義と矛盾が生み出したものとして捉え、それを克服することが人間の解放に繋がると考えました。