## プラトンのゴルギアスの思考の枠組み
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弁論術と修辞学への批判
「ゴルギアス」は、ソクラテスと、当時の高名な弁論術教師ゴルギアス、そしてその弟子ポロスやカリクレスとの対話篇である。ソクラテスは、ゴルギアスらに対して、弁論術の本質とその倫理的な問題点について鋭く追及する。
ソクラテスは、弁論術を「説得術」の一種とみなし、それが真実を追求するのではなく、単に聴衆を説得することを目的としている点に問題があると指摘する。彼は、弁論術が正義や善といった真の知識に基づいていないため、しばしば不正や悪事を正当化するために利用されかねないと主張する。
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快楽と善の対比
ソクラテスは、ポロスやカリクレスとの議論の中で、快楽と善の区別を明確化する。彼らは、快楽こそが人間の最大の善であると主張する。しかしソクラテスは、快楽は一時的なものであり、真の幸福をもたらすものではないと反論する。彼は、真の善とは、魂の秩序と調和であり、それは正義や節制といった徳によって達成されると主張する。
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魂のあり方と政治
「ゴルギアス」では、個人と政治の関係についても論じられている。ソクラテスは、真の政治家は、市民の魂の善を追求する者であるべきだと主張する。彼は、不正な手段を用いてでも権力を握ろうとする政治家を批判し、真の政治家は、正義に基づいて統治し、市民をより善い人間へと導く者であるべきだと説く。
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「不正を行うよりも、不正を受ける方が良い」
ソクラテスは、「不正を行うよりも、不正を受ける方が良い」という、当時の常識からすると逆説的な主張を展開する。彼は、不正を行うことは魂を腐敗させる行為であり、真の幸福を阻害すると考える。一方、不正を受けることは、たとえ肉体的な苦痛を伴うとしても、魂を浄化する機会となりうると主張する。
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死後の世界の暗示
「ゴルギアス」の終盤では、神話的なイメージを用いながら、死後の世界が暗示される。ソクラテスは、死後、人間は生前の行いによって裁かれると語る。彼は、不正を行った者は、その罪に応じて罰せられるが、正義を貫いた者は、永遠の幸福を享受できると説く。この部分は、プラトンの魂の不滅という思想を反映していると考えられる。