ブローデルの地中海の思想的背景
アナール学派の影響
ブローデルはアナール学派の中心人物の一人であり、彼の著作『地中海』はこの学派の思想を色濃く反映しています。アナール学派は、従来の歴史学が政治や事件史に偏重していることを批判し、より長期的かつ構造的な歴史の分析を目指しました。特に、地理、気候、経済、社会構造といった要素が歴史に与える影響を重視しました。
地理学の影響
ブローデルは歴史学だけでなく、地理学にも深い関心を抱いていました。彼は、地理的な環境が人間の活動に大きな影響を与えると考えており、『地中海』においても、地中海という地理的空間が歴史に与える影響を詳細に分析しています。彼は、地中海を単なる舞台装置としてではなく、歴史を規定する重要な要素として捉えていました。
マルクス主義の影響
ブローデルはマルクス主義の影響も受けており、『地中海』においても、経済構造や社会階層が歴史に与える影響を重視しています。ただし、彼はマルクス主義をそのまま受け入れたわけではなく、独自の解釈を加えています。例えば、彼は経済決定論を批判し、文化や宗教といった要素も歴史において重要な役割を果たすと考えていました。
長期持続の概念
ブローデルは歴史を分析する上で、「長期持続」という概念を重視しました。これは、地理的環境や気候といった要素が非常に長い期間にわたって持続し、歴史に根底的な影響を与え続けるという考え方です。彼は『地中海』において、地中海世界における様々な歴史現象を、この長期持続の概念を用いて説明しようと試みました。