フローベールのサランボーの秘密
サランボーの秘密
フローベールの小説「サランボー」には、作中ではっきりと解明されない謎や秘密が多く存在します。 これらの謎は、読者の解釈に委ねられており、作品の魅力を高める一要素となっています。 以下に、作中で示唆されるが、明確な答えが提示されない謎の例を挙げます。
1. サランボーのマトーに対する感情
カルタゴの将軍ハンニバルの妹であるサランボーと、傭兵隊長マトーの関係は、物語の中心的なテーマの一つです。 サランボーは、祖国を守るために、聖なるヴェールを盗んでまでマトーを誘惑しようとします。 しかし、サランボーのマトーに対する感情が、真の愛情から来るものなのか、祖国愛に突き動かされた結果なのかは、はっきりと描かれていません。
2. マトーの最期
物語の終盤、マトーは捕らえられ、サランボーの目の前で処刑されます。 その際、マトーはサランボーに最後の言葉を伝えようとしますが、サランボーはそれを聞かずに息絶えます。 マトーが何を言おうとしたのかは、読者には永遠に謎として残されます。 これは、愛と死、そしてすれ違いという、普遍的なテーマを読者に突きつける効果的な演出となっています。
3. 聖なるヴェールの影響
聖なるヴェールは、カルタゴの守護神タニットの化身であり、作中では超自然的な力を持つとされています。 サランボーがヴェールを盗み出したことで、カルタゴに様々な災厄が降りかかりますが、ヴェール自体が持つ力や、それが物語に与えた影響については、明確な説明は避られています。 読者は、ヴェールを巡る出来事を通して、信仰と迷信、そして人間の欲望が織りなす複雑な関係について、深く考えさせられることになります。