## フローベールのサランボーの批評
発表当時の評価
1862年の出版当時、「サランボー」は批評家から賛否両論の評価を受けました。
* **肯定的な評価:** エキゾチックな描写や壮大なスケール、そしてストーリーテリングの力は高く評価されました。特に、古代カルタゴの文化や風俗を生き生きと描写した点、サランボーやマートといった登場人物の造形、そして戦争や宗教儀式の迫真性などが賞賛されました。当時のロマン主義的な風潮に合致していたことも、好評の一因と考えられます。
* **否定的な評価:** 一方で、暴力描写の過 crudeness や史実に対する不正確さ、登場人物の心理描写の不足などを批判する声もあがりました。特に、サランボーとマートの恋愛関係が、物語の背景や登場人物の性格に照らして不自然であると批判されました。また、一部の批評家は、写実主義的な描写とロマン主義的な構成のバランスが悪く、作品全体として散漫な印象を与えると指摘しました。
歴史的評価の変化
時代を経るにつれて、「サランボー」に対する評価は変化してきました。
* **19世紀後半:** 自然主義文学の台頭とともに、ロマン主義的な要素の強い「サランボー」は時代遅れとみなされるようになり、評価は低迷しました。
* **20世紀:** 20世紀に入ると、文学における形式主義やモダニズムの影響を受け、「サランボー」の文体や構成に対する再評価が進みました。特に、フローベールの緻密な文体や客観的な描写は、後の時代の作家たちに大きな影響を与えたとされています。
* **現代:** 現代においても、「サランボー」は歴史小説の古典として、またフローベールの代表作として一定の評価を得ています。しかし、その暴力描写や植民地主義的な視点は、現代の倫理観に照らして問題視されることもあります。
文学史における位置づけ
「サランボー」は、フローベールの代表作の一つであり、歴史小説の傑作として位置づけられています。
* **写実主義とロマン主義の融合:** 「サランボー」は、写実的な描写とロマン主義的な構成を融合させた作品として評価されています。フローベールは、膨大な資料を基に古代カルタゴの文化や風俗を詳細に描写していますが、同時に、サランボーとマートの恋愛といったフィクションの要素も積極的に取り入れています。この二つの要素の融合が、「サランボー」独特の魅力を生み出していると言えます。
* **文体の革新性:** フローベールの文体は、その精緻さと客観性において高く評価されています。彼は、個人的な感情や主観を排し、対象を冷徹なまでに描写することで、読者に強い印象を与えています。「サランボー」の文体は、後の時代の作家たちに大きな影響を与え、小説における文体の可能性を大きく広げました。