## フォークナーの響きと怒りの世界
「フォークナーの響きと怒り」の舞台
物語の舞台は、アメリカ南部ミシシッピ州ヨクナパトーファ郡にあるジェファーソンという架空の町と、その周辺です。時代設定は20世紀初頭で、南北戦争後の南部の没落していく貴族社会を背景にしています。
コンプソンの家の歴史と没落
かつては裕福な農園主として栄えたコンプソン家は、時代の流れとともに経済的に困窮し、社会的な地位も失っていきます。かつて所有していた土地や奴隷は失われ、家族は過去の栄光にしがみつきながら、崩壊への道をたどります。
コンプソン家の4人の子供たち
物語は、コンプソン家の4人の子供たち、ベンジー、クエンティン、ジェイソン、キャディの視点から語られます。それぞれの章は異なる時間軸と視点で描かれ、断片的な記憶や主観的な解釈を通して、家族の歴史と崩壊が浮かび上がります。
ベンジー
ベンジーは、知的障害を持つ三男で、3歳児程度の知能しかありません。彼の章は、時間や因果関係が曖昧な意識の流れで書かれており、他の登場人物たちの言動や出来事を感覚的に捉えています。
クエンティン
クエンティンは、コンプソン家の長男で、ハーバード大学に通う繊細で感受性の強い青年です。彼は、妹キャディの純潔と家族の名誉に執着し、その喪失に深く傷つき、絶望の果てに自殺を選びます。
ジェイソン
ジェイソンは、コンプソン家の次男で、現実的で冷酷な性格の持ち主です。彼は、家族の没落を他人事のように眺め、金銭に執着し、妹キャディとその娘クエンティンを搾取します。
キャディ
キャディは、コンプソン家唯一の娘で、奔放で自由奔放な性格をしています。彼女は、家族の束縛から逃れようとしますが、結果的に妊娠、離婚、そして娘クエンティンを手放すことになります。
時間と記憶の複雑な構造
フォークナーは、本作において、時間と記憶を複雑に交差させながら物語を展開させていきます。それぞれの章は、異なる時間軸と視点で描かれ、過去の出来事が現在に影響を与え、登場人物たちの心理に大きな影を落とします。読者は、断片的な情報をつなぎ合わせながら、コンプソン家の歴史と真実を解き明かしていくことになります。