ピレンヌのベルギー史の話法
ピレンヌのベルギー史における史料批判
アンリ・ピレンヌは、19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍したベルギーの歴史家です。彼は、綿密な史料批判に基づいた歴史叙述によって、それまでのベルギー史研究に大きな影響を与えました。ピレンヌは、一次史料の批判的な読解を重視し、従来の通説や偏った解釈を排することを目指しました。
ローマ期から中世への連続性と断絶
ピレンヌは、ローマ帝国崩壊後の西ヨーロッパ史を、従来のゲルマン中心史観とは異なる視点から捉え直しました。彼は、ローマ帝国の遺産がフランク王国などゲルマン国家に引き継がれ、西ヨーロッパ文明の基礎を築いたと主張しました。特に、地中海交易の継続が、経済的・文化的連続性を生み出した点を強調しました。
イスラムの進出と西ヨーロッパ世界
ピレンヌは、7世紀以降のイスラム勢力の拡大が、西ヨーロッパ史に大きな転換点をもたらしたと考えました。イスラム帝国の進出により、地中海交易が断絶し、西ヨーロッパは経済的に閉鎖的な状況に陥ったと主張しました。この結果、西ヨーロッパは独自の封建社会を形成し、独自の文化を発展させることになったと彼は分析しました。
都市の起源と発展
ピレンヌは、都市の起源と発展についても独自の解釈を展開しました。彼は、従来の都市起源論に見られたローマ都市からの連続性を否定し、中世都市は10世紀以降に、商業活動の活発化に伴い、新たに誕生したと主張しました。ピレンヌによれば、商工業者たちは、都市に自治権を獲得することで、封建領主の支配から逃れ、自由な経済活動を展開していきました。