ピレンヌのベルギー史の案内
ピレンヌと「ベルギー史」
アンリ・ピレンヌ(1862-1935)は、ベルギーを代表する歴史家の一人であり、中世ヨーロッパ史、特に経済史と都市史の分野において多大な業績を残しました。彼の代表作の一つが、1900年から1931年にかけて全7巻で刊行された「ベルギー史」(Histoire de Belgique)です。
「ベルギー史」の内容と特徴
ピレンヌの「ベルギー史」は、古代ガリア時代から第一次世界大戦前夜までのベルギー地域の歴史を網羅的に扱った壮大な作品です。単なる政治史に留まらず、経済、社会、文化、宗教など、多角的な視点からベルギーの歴史を描き出している点が特徴です。
ピレンヌは、「ベルギー史」において、従来の歴史観にとらわれない独自の解釈を展開しています。特に、ローマ帝国滅亡後のヨーロッパ世界におけるイスラム勢力の影響を重視し、従来のゲルマン中心史観に修正を加えました。また、中世都市の発展を経済活動と結びつけて分析し、都市史研究に新たな視点を提供しました。
「ベルギー史」の評価と影響
ピレンヌの「ベルギー史」は、刊行当時から学界で高く評価され、歴史学研究に大きな影響を与えました。特に、経済史と都市史の分野において、その後の研究に多大な影響を与えました。
しかし、ピレンヌの「ベルギー史」は、ベルギーという国家の形成を強調しすぎるきらいがあり、その点において批判もあります。また、彼の歴史観は、その後の歴史研究の進展によって修正を迫られる部分もあります。
「ベルギー史」を読むにあたって
ピレンヌの「ベルギー史」は、膨大な資料に基づいて書かれた学術的な作品であり、専門的な知識がないと理解が難しい部分もあります。しかし、彼の歴史に対する情熱と、当時の最新の研究成果が盛り込まれた内容は、現代の読者にとっても多くの示唆を与えてくれます。