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ピレンヌのベルギー史の価値

ピレンヌのベルギー史の価値

1. 史料批判に基づいた革新的な歴史叙述

アンリ・ピレンヌは、歴史学において史料批判の重要性を説き、自身もその手法を駆使した歴史家として知られています。「ベルギー史」は、中世の一次史料を徹底的に分析し、従来の通説に疑問を呈することで、ベルギーという国家の形成過程を新たな視点から描き出しました。

2. ローマの遺産とゲルマン社会の融合

従来、フランク王国などゲルマン民族の移動と征服が、ローマ帝国の崩壊と中世ヨーロッパの形成に決定的な役割を果たしたと考えられていました。しかし、ピレンヌは「ベルギー史」において、ローマ帝国の遺産、特に都市と商業活動が、ゲルマン民族支配下においても継続していたことを明らかにしました。そして、このローマ的伝統とゲルマン社会の融合が、後のベルギー国家の形成に繋がると主張しました。

3. ムハンマドの登場とヨーロッパ世界の形成

ピレンヌは、「ベルギー史」を含む自身の著作において、7世紀におけるイスラム勢力の台頭をヨーロッパ史の転換点として位置づけました。彼は、イスラム帝国による地中海世界の支配が、西ヨーロッパとビザンツ帝国の交流を断絶させ、結果として西ヨーロッパが独自の文化圏を形成するに至ったと主張しました。これは、従来のゲルマン民族中心史観とは異なる視点であり、歴史学界に大きな影響を与えました。

4. 経済史・社会史の視点

ピレンヌは、「ベルギー史」において政治史だけでなく、経済史や社会史の視点も重視しました。彼は、都市と農村の関係、商工業の発展、社会階層の変遷など、多角的な分析を通じて、ベルギー社会の構造的な変化を明らかにしようとしました。これは、当時の歴史学においては先駆的な試みであり、後の歴史研究に大きな影響を与えました。

5. 歴史学研究における古典としての評価

「ベルギー史」は、出版から100年以上経った現在でも、歴史学研究における重要な古典として位置づけられています。ピレンヌの史料批判に基づいた緻密な分析、従来の通説を覆す大胆な仮説は、多くの歴史家を刺激し、その後の歴史研究に多大な影響を与え続けています。

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