## ピグーの厚生経済学の批評
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功利主義に基づく福祉の測定
ピグーの厚生経済学は、功利主義の考え方を基盤としています。彼は、個人の効用を貨幣価値に換算し、社会全体の効用をそれらの総和として捉えました。しかし、このアプローチには、以下のような批判が向けられます。
* **効用の測定の困難さ**: 効用は主観的なものであり、客観的に測定することは困難です。貨幣価値に換算することも、個人の所得水準や選好によって異なり、正確性を欠く可能性があります。
* **功利主義の限界**: 功利主義は、最大多数の最大幸福を追求する考え方ですが、少数者の犠牲を正当化する可能性があります。また、自由や権利といった価値を十分に考慮していないという指摘もあります。
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政府介入の根拠
ピグーは、市場メカニズムには限界があり、政府による介入が必要であると主張しました。外部経済効果や所得格差などの市場の失敗を是正するため、政府は税制や公共事業を通じて介入すべきだと考えました。しかし、この主張に対しても、いくつかの批判が存在します。
* **政府の情報の不完全性**: 政府が市場の失敗を正確に把握し、適切な政策を実施するためには、完全な情報が必要となります。しかし、現実には政府が全ての情報を把握することは困難であり、誤った政策 intervention を招く可能性があります。
* **政府の失敗**: 政府による介入は、官僚主義や腐敗などの問題を引き起こす可能性があります。また、政府の介入によって、市場メカニズムが歪み、かえって非効率性を招く可能性も指摘されています。
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静的な分析
ピグーの厚生経済学は、静的な均衡分析を基盤としており、経済の動態的な側面を十分に考慮していません。技術革新や経済成長など、長期的な変化を捉えることができないという限界があります。