## ピグーの厚生経済学の入力と出力
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入力
ピグーの厚生経済学の主要な**入力**は、功利主義の倫理、限界効用逓減の法則、そして所得と富の不平等な分配という社会問題への関心です。
* **功利主義:** ピグーは、ベンサムやミルに代表される功利主義の倫理に基づいて、社会全体の幸福を最大化することを目指しました。功利主義は、「最大多数の最大幸福」を追求する思想であり、ピグーはこれを経済政策の目標として設定しました。
* **限界効用逓減の法則:** この法則は、財やサービスの消費量が増加するにつれて、追加的な消費から得られる満足度(限界効用)が減少していくというものです。ピグーは、この法則を根拠に、所得の限界効用は富裕層よりも貧困層の方が高いと主張しました。つまり、貧困層に所得を再分配することで、社会全体の効用を増加させることができると考えました。
* **所得と富の不平等:** ピグーは、当時のイギリス社会における深刻な貧困問題を目の当たりにし、所得と富の不平等が社会全体の幸福を損なう要因であると考えていました。彼は、政府が介入し、富の再分配を行うことで、より公正で効率的な社会を実現できると主張しました。
これらの入力を基に、ピグーは独自の厚生経済学の体系を構築しました。
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出力
ピグーの厚生経済学の**出力**は、政府による積極的な介入、特に租税政策を通じての所得再分配を正当化する理論的根拠を提供することでした。
* **政府介入の正当化:** ピグーは、市場メカニズムだけでは社会的に最適な資源配分が達成されない場合があると主張しました。外部経済効果や公共財の存在など、市場の失敗が生じる場合には、政府が介入することで、資源配分の効率性を改善できると考えました。
* **租税政策による所得再分配:** ピグーは、累進課税などの租税政策を通じて富裕層から貧困層へ所得を再分配することで、社会全体の効用を増加させることができると主張しました。これは、前述した限界効用逓減の法則に基づくものであり、貧困層への所得移転は、社会全体の幸福度を大きく向上させると考えました。
* **厚生経済学の体系化:** ピグーは、「経済厚生論」などの著書を通じて、自身の経済思想を体系化し、後世の経済学者に多大な影響を与えました。彼の理論は、福祉国家の政策理念に大きな影響を与え、現代の経済学においても重要な位置を占めています。
しかし、ピグーの厚生経済学は、その後の経済学の発展の中で、様々な批判にもさらされることになりました。