ピグーの厚生経済学とアートとの関係
ピグーの厚生経済学における「経済的厚生」と「非経済的厚生」
アーサー・セシル・ピグーはイギリスの経済学者で、彼の主著『厚生経済学』(1920年)は、現代の厚生経済学の基礎を築いたと評価されています。ピグーは同書の中で、政府の役割は経済活動を調整し、社会全体の厚生、すなわち「国民配当」を最大化することだと主張しました。
ピグーは厚生を「経済的厚生」と「非経済的厚生」の二つに分けました。「経済的厚生」は所得や富など貨幣価値で測定可能なものを指し、「非経済的厚生」は貨幣価値で測定できない、例えば健康、教育、芸術鑑賞といったものを指します。ピグーは「非経済的厚生」を重視し、政府は市場メカニズムだけでは十分に供給されない「非経済的厚生」を政策によって増進する必要があると主張しました。
ピグーの厚生経済学におけるアートの位置づけ
ピグーは「非経済的厚生」の一つとしてアートを挙げ、その重要性を認識していました。彼は著書の中で、アートは人々の精神的な豊かさを増進し、ひいては社会全体の厚生を高めると述べています。しかし、アートは市場メカニズムだけでは十分に供給されないため、政府による支援が必要であると主張しました。
ピグーは具体的な政策として、美術館や劇場への助成、芸術教育の充実などを挙げました。彼は、これらの政策によって人々のアートへのアクセスが向上し、「非経済的厚生」が増進すると考えていました。
ピグーの厚生経済学とアートの関係における限界
ピグーの厚生経済学は、アートを「非経済的厚生」として位置づけ、その重要性を認識したという点で画期的でした。しかし、彼の議論にはいくつかの限界も指摘されています。例えば、アートの価値を客観的に測定することが難しいという問題や、「非経済的厚生」の概念が曖昧であるという指摘があります.