## ヒルファーディングの金融資本論と言語
ヒルファーディングの『金融資本論』は、マルクス経済学の古典の一つとして、資本主義の高度化に伴う金融の役割を分析した重要な著作です。本稿では、その内容を理解する上で欠かせない「言語」という観点に焦点を当て、ヒルファーディングが用いる用語や表現方法を詳しく解説します。
概念の定義と体系性
ヒルファーディングは、マルクス経済学を継承しつつも、独自の概念を定義し、複雑な金融システムを体系的に理解しようと試みました。
まず、彼は「金融資本」を「銀行資本と産業資本が結合したもの」と定義します。この定義は、従来のマルクス経済学における金融部門への理解を大きく前進させ、産業資本と不可分な関係にある金融資本の支配的な役割を明らかにしました。
さらに、ヒルファーディングは、「参加システム」「個人資本家」「資本家階級」といった概念を用いて、金融資本が経済全体をどのように支配していくのかを分析しました。彼は、銀行が企業の株式を所有することで企業経営に参加する「参加システム」を通じて、金融資本が産業資本を支配下に置くと主張しました。また、「個人資本家」が「資本家階級」へと統合されていく過程を描き、金融資本による資本集中と独占の進展を明らかにしました。
抽象的な理論と具体的な事例の往還
ヒルファーディングの著作の特徴は、高度に抽象的な理論と具体的な事例分析を組み合わせている点にあります。彼は、マルクス経済学の用語や概念を駆使して複雑な金融システムを理論的に分析する一方で、当時のドイツやアメリカの金融市場の状況を具体的な事例として取り上げることで、読者の理解を助けています。
例えば、彼はドイツの大銀行が企業の株式を保有することで支配権を握り、企業経営に深く関与している状況を詳細に記述することで、「参加システム」の概念を具体的に説明しています。また、アメリカのトラスト企業の事例を挙げながら、金融資本による資本集中と独占の進展を分析し、理論的な主張を裏付けています。
難解な文章と解釈をめぐる論争
『金融資本論』は、その学術的な厳密さと複雑さゆえに、難解な文章で書かれていることでも知られています。マルクス経済学特有の用語や概念に加え、当時の金融システムに関する専門用語が頻繁に登場するため、読解には相当の努力を要します。
また、その解釈をめぐっては、マルクス経済学者や経済史家の間で様々な論争が繰り広げられてきました。特に、金融資本が最終的にどのような形態をとるのか、また、金融資本の発展が資本主義の崩壊にどのようにつながるのかといった点については、現在に至るまで議論が続いています。