パーフィットの理由と人格の選択
パーフィットの還元主義と選択の自由
デレク・パーフィットは、著書『理由と人格』の中で、人間のアイデンティティ、そして道徳と合理性に関する私たちの直感を揺さぶる、還元主義的な人格観を提示しています。パーフィットによれば、人は時間的に拡がった存在であり、ある時点における自分は、過去の自分や未来の自分と心理的な連続性によってのみ結びついているに過ぎません。
心理的結合と連続性の重要性
パーフィットは、心理的な結合と連続性を重視し、それが人間のアイデンティティを構成する上で重要な役割を果たすと主張します。心理的な結合とは、信念、記憶、欲求、性格などの心理的な特徴が、時間的に異なる自己の間で共有されている状態を指します。一方、心理的な連続性とは、これらの心理的な特徴が、時間経過とともに徐々に変化していく様子を指します。
分枝した自己と選択のジレンマ
パーフィットは、思考実験を通じて、私たちの直感的な自己理解に挑戦します。例えば、脳の半球移植によって、二人の異なる人格を持つ人間が誕生した場合、元の自己はどちらであるのかという問題を提起します。この「分枝した自己」のケースは、自己が時間的に連続した単一の実体であるという考え方に疑問を投げかけます。
選択と責任の再定義
パーフィットの還元主義的な人格観は、選択と責任の概念にも影響を与えます。もし自己が時間的に拡散した存在であるならば、ある時点における選択は、未来の自己に影響を与えるものの、その責任は拡散していくことになります。
パーフィットの議論の影響
パーフィットの議論は、形而上学、倫理学、心の哲学など、様々な分野に大きな影響を与えてきました。彼の還元主義的な人格観は、自己の同一性、選択の自由、道徳的責任といった根本的な問題について、新たな視点と議論を提供しています。