## パレートの社会学概論の評価
パレートの社会学概論とは
「パレートの社会学概論」(Trattato di sociologia generale)は、イタリアの経済学者・社会学者であるヴィルフレド・パレートによって1916年に出版された社会学の主著です。
この著作は、パレートが経済学から社会学へと研究領域を移行した後の主要な成果であり、彼の社会学理論の集大成と位置づけられています。
本書は、人間の論理的行為と非論理的行為の分析を中心として、社会の構造と変動のメカニズムを解明しようと試みています。
学術的な評価
「パレートの社会学概論」は、出版当時から学術界において多大な影響を与え、今日においても社会学や政治学の古典として読み継がれています。
特に、エリート交代の理論である「エリート循環」や、人間の非論理的行動を説明する「残余」と「派生」の概念は、後の社会学者たちに大きな影響を与えました。
例えば、アメリカの政治学者であるチャールズ・ライト・ミルズは、パレートのエリート理論を発展させて、現代社会における権力の構造を分析しています。
批判的な評価
一方で、「パレートの社会学概論」は、その方法論や政治的な立場に対して、多くの批判も寄せられています。
例えば、パレートが人間の行動を「論理的行為」と「非論理的行為」に二分したことは、人間の行動の複雑さを十分に捉えきれていないという批判があります。
また、パレートは、社会主義や民主主義に対して批判的な立場をとっていましたが、その政治的立場が彼の社会学理論に影響を与えているという指摘もあります。
翻訳と普及
「パレートの社会学概論」は、原著のイタリア語版に加えて、英語、フランス語、ドイツ語、日本語など、多くの言語に翻訳されています。
日本語訳としては、1970年に平凡社から出版された社会思想全集版と、1988年に岩波書店から出版された岩波文庫版があります。