## バルザックのゴリオ爺さんを読む
登場人物
周囲の人間関係を通してゴリオ爺さんの人物像が浮かび上がる様子や、それぞれの思惑が交錯する様について解説する。
「ゴリオ爺さん」には、様々な人物が登場します。その中でも特に重要なのは、 tytułowy bohater, ゴリオ爺さんと同宿する貧乏学生ラスティニャック、そしてゴリオ爺さんの娘であるアナスタジーとデルフィンの三人です。
ゴリオ爺さんは、かつては裕福なパスタ商でしたが、愛娘二人に財産を全てつぎ込み、今では貧しい下宿暮らしを余儀なくされています。それでもなお、娘たちへの愛情は変わらず、彼女たちの望みを叶えるためならどんな苦労も惜しみません。
ラスティニャックは、出世を夢見てパリに出てきた野心的な青年です。彼はゴリオ爺さんとその娘たちの関係を目の当たりにする中で、パリの上流社会の腐敗と、金と欲望に翻弄される人々の姿を知ることになります。
アナスタジーとデルフィンは、ゴリオ爺さんの愛娘であり、彼の財産を分け与えられた存在です。しかし、彼女たちは父親の愛情に感謝するどころか、贅沢な暮らしのために彼を金づるとしか見ていません。
舞台設定
当時の社会背景や風俗習慣、パリの街並みが作品に与える影響について解説する。
本作の舞台は、19世紀前半のフランス、パリです。七月革命後の混乱が収まりつつある時代であり、人々は社会的な成功と物質的な豊かさを強く求めていました。
当時のパリは、階級社会の縮図とも言える街でした。貴族やブルジョワジーは贅沢な暮らしを享受する一方、貧困層は劣悪な環境で生活していました。ゴリオ爺さんが住むヴォケール館は、そうした貧富の格差を象徴する場所として描かれています。
また、パリは欲望渦巻く街でもありました。人々は出世や金儲けのために手段を選ばず、互いに騙し合い、裏切り合う姿は、ラスティニャックに大きな衝撃を与えるとともに、彼自身の倫理観にも影響を与えていきます。
テーマ
貧困と富、親子愛、欲望、社会の不条理など、作品を通して浮かび上がるテーマについて解説する。
「ゴリオ爺さん」は、複数のテーマが複雑に絡み合った重厚な作品です。
まず、貧富の差の問題が挙げられます。ゴリオ爺さんの没落と娘たちの贅沢な暮らしの対比は、当時のフランス社会における経済格差の深刻さを浮き彫りにしています。
次に、親子の愛憎劇という側面も見逃せません。ゴリオ爺さんの盲目的なまでの愛情と、娘たちの冷酷なまでの仕打ちの対比は、人間のエゴイズムと、親子関係の脆さを描き出しています。
さらに、人間の欲望と社会の不条理というテーマも読み取れます。ラスティニャックは、ゴリオ爺さんとその娘たちの関係を通して、欲望に支配されたパリ社会の現実を目の当たりにし、彼自身もまた、その渦に巻き込まれていきます。