バビッジの経済学と統計学の方法についての発想
バビッジと産業革命の結びつき
チャールズ・バベッジ（1791-1871）は、産業革命の真っ只中に活躍したイギリスの数学者、機械エンジニア、発明家、哲学者でした。蒸気機関や工場システムなど、当時の技術革新を目の当たりにしたバベッジは、これらの技術進歩が社会や経済に大きな影響を与えることを確信していました。
機械化と分業
バベッジは、特にアダム・スミスの提唱した分業の概念に強い関心を持ちました。分業は、複雑な作業工程を単純な作業工程に分割し、それぞれの作業工程を専門の労働者が担当することで、生産効率を飛躍的に向上させるという考え方です。バベッジは、この分業の概念を機械にも適用できると考えました。彼は、複雑な計算を単純な計算ステップに分解し、それぞれのステップを機械が実行することで、計算の効率化と正確性の向上が図れると考えました。この発想が、彼が設計した階差機関や解析機関といった機械式計算機の開発につながりました。
『機械と製造の経済学』における分析
バベッジは、1832年に出版した著書『機械と製造の経済学』の中で、工場の生産プロセスや機械化の影響について詳細な分析を行いました。彼は、工場の生産性を向上させるためには、機械の導入だけでなく、工場全体のレイアウトや作業工程の設計、労働者の配置などを最適化する必要があると考えました。また、バベッジは、機械化によって労働者の技能が低下するという批判に対して、機械化は単純な作業を機械に置き換えることで、労働者がより高度な技能を必要とする作業に従事することを可能にすると反論しました。
データ収集と分析の重要性
バベッジは、経済や社会の現象を理解するためには、データの収集と分析が不可欠であると考えていました。彼は、政府や企業に対して、経済活動や社会状況に関する詳細な統計データの収集を呼びかけました。バベッジは、これらのデータを用いることで、経済のメカニズムを解明し、社会問題の解決策を見出すことができると信じていました。